マジョリティーの物差しでマイノリティーは測れない。惨めな人生で上等だ。

僕は一時期、過去にバックパッカーとして海外を旅していた経験がある。ワーキングホリデーで海外で働いていたこともある。

ある日のバイト中、パチンコが大好きで「金持ちになりたい。」が口癖の若者に僕の過去を尋ねられた。なのでバックパッカーや海外で働いてた事があると話すと彼はこう言った。
「それで、海外でなんか得たものあるんすか？」

得たものねぇ...。この手の質問は毎回決まって絶望的な質問だということを僕は知っていた。
僕がどんなにその「得たものの価値」を説明しても彼のような奴には絶対に伝わらないということを僕は知っているからである。言っても伝わらない。言わなければ当然伝わらない。いずれにせよ僕は彼にとって価値の低い人間という烙印を押されてしまう。地獄だった。

企業の面接と一緒だ。大学卒業後、海外に行っていた若者に対し、「で、きみは海外で何を学んできたの？」そんな質問と一緒である。もちろん企業はビジネスなのでそれでいいと思う。

彼にとっての価値と僕にとっての価値はまるで世界が異なり、彼の価値観の方が世論(マジョリティー)だった。履歴書に書けない、キャリアに繋がらない、お金にならない事に価値はない。いくらそれが自分の人生にとって価値のある挑戦であり、輝かしい体験であったとしてもだ。それが彼の価値観だった。でなければ、そもそも「海外でなんか得たものあるんすか？」なんて質問はでてこないからである。

その後、僕は彼の質問に大したアンサーを返すことなく、彼の価値観、そして世論にぶった斬られた。価値の低い奴という烙印を押された。僕の中で大事にしていた価値や想い出は砕け散った。僕がどのような経緯で、どのような思いを抱き、海外に出て、何をしてきたかなんて何一つ知らないくせに。

自分がマイノリティーであればこんなことは日常茶飯事である。いつだって蟻を踏み潰すかのごとく簡単に、自分にとって大事なものは鼻で笑われ、見下されるのだ。しかし腐ってはいけない。マジョリティーの物差しでマイノリティーは測れない。たとえボロボロになったとしても、自分が価値があると思うものには絶対に価値があるのだ。そして、それを誤魔化し平和に生きるぐらいなら、惨めな人生で上等なのだ。